真珠は美しい海の産物なのに……日本の海にある危機
真珠はきれいな環境の産物
日本真珠の危機
国策として進められた真珠産業は日本に大きな利益をもたらします。ところが、そんな日本の海にも異変が起きているのです。それは真珠業界存亡の危機とも言えることなのです。
三重県水産研究所のホームページにはこうあります。
「平成6、7年頃から愛媛、大分県等の豊後水道海域の稚母貝生産地で貝柱が赤褐色に着色し、貝が痩せてへい死するという、これまでに経験したことのない病気が発生した。この大量へい死は、発生海域が母貝の供給地であったため、瞬く間に全国の真珠養殖場に広がって大騒動となっている」
「平成9年(1997年)から本格的な調査と原因探索が開始されているが、現在にいたるまで病原体は確認されていない。三重県でも平成8、9、10年と真珠生産は急激に減少し、真珠養殖始まって以来最大の被害を被っており、真珠業界の存亡の危機といわれる状況にある」
この文章が記載された当時と比べて、病原体の研究は進んでいますし、対策も進んでいます。しかし、日本の海がかつてと比べてアコヤガイと海さえあれば真珠が取れるという海でなくなっているのはまぎれもない事実です。
古代から日本は真珠王国でした。養殖技術が確立され、戦後も大きな利益をもたらし、文化といってもいい産業になった。その産業がいま危機に立っています。海と真珠の関係を見直し、美しい海を取り戻す取り組みが今こそ必要なのです。
「ひと粒の真珠」を育む海を守る
真珠の養殖が地球環境問題と共存して進むことを目指すため、また、クリーンな環境を次世代にバトンするために、真珠貝の育つ環境を守る団体があります。それが、NPO法人「ひと粒の真珠」です。
NPO「ひと粒の真珠」
http://www.npo-hitotsubu.com/index.html
NPO「ひと粒の真珠」は、美しい「ひと粒の真珠」を育てているアコヤ貝のために設立された団体です。海の清掃や作業現場の管理、海に恩恵を与える広葉樹の植樹などを通して、環境を守るためのさまざまな活動を続けています。パールデイズは「ひと粒の真珠」の活動を支援しています。
参考文献 山田篤美『真珠の世界史』(中公新書) 三重県水産研究所ホームページ