真珠は貝から生まれたものです。真珠をつくる貝は少なくありません。淡水では多くの貝から真珠が取れますし、お寿司屋さんの高級ネタであるアワビも立派な真珠貝です。
ですが、その最高峰といえば、古代より間違いなくアコヤガイとされています。その外見はホタテガイにそっくりですが、とても美しい真珠を生み出します。
アコヤガイはとてもミステリアスな貝です。その謎をみていきましょう。
アコヤガイから取れた日本最古の真珠
山田篤美『真珠の世界史』(中公新書)によると、アコヤガイは海水温にも敏感な貝で、最適な温度は23℃〜25℃とされています。28℃を超えると、死んでいく貝が増えていくため、まとまった生息地はそう多くありませんでした。
その一つが日本だったのです。日本では古来よりアコヤガイから真珠をとっていました。鹿児島県の貝塚には日本最古とされる縄文時代後期のアコヤ真珠が残っています。現代でも最高級品種といえるような美しい青とピンクがかかったような美しい真珠です。
さて、それがいかにすごいことか。アコヤガイから真珠が見つかる確率を考えて見ましょう。真珠が見つかる確率はどのくらいなのでしょうか。
アコヤガイ、別格の輝き
同書でも紹介されいる文献によれば、1万個の貝の中から、小さな、小さな粒の真珠がいくつか見つかれば儲けもの。そのなかから、5ミリクラスの「大粒」が出てこれば大喜びというものだったようです。
淡水真珠でいえば10ミリを超えるものも多くありますし、きれいな円形のものだって少なくありません。時に、重宝もされていましたが実際はアコヤ真珠の代替というのが現実でした。淡水ものは大きくても光沢や色めきは叶わない。それくらいアコヤ真珠の輝きは別格だったのです。
今でこそ、5ミリといえばそんなに大粒と言えるようなものではありませんが、アコヤガイの中から生まれる天然物でそれだけのサイズがでてくるというのは、縄文後期を生きる人たちにとってみても一大事件だったのでしょう。
縄文の人々も真珠を採っていた??
そう言える根拠があります。これまで、貝塚に残った真珠というのは食べたあとの残りものを捨てたなかにあると考えられてきました。ところが、最近の研究ではどうも意図的に真珠を採取していたのではないかという説も唱えられています。
鹿児島県のある貝塚では、大量のアコヤガイが出土しているのですが、他の貝はそこからは出土していません。さらに出土したアコヤガイは破砕されたものが多く、真珠そのものの出土が少ないという事実があります。
これは古代の人々がアコヤガイをただ食用として扱っていたのではなく、真珠を採取し、どこかに持ち帰っていたことを意味するのではないかというのです。
真珠の美しさは時代を超える
そのアコヤガイを使った養殖技術が日本で開発され、真珠が一気に身近になるおのはずっと後のお話です。大事なのは、もしかしたら古代の人々も真珠の輝きに心を奪われていたのではないかということです。
なんだか、古代の世界が一気に身近に感じられますね。真珠の美しさは時代を超えていく。これだけは間違いなさそうです。