コラム

6月の誕生石「真珠」にまつわるストーリー


6月の誕生石は真珠です。生まれた月の宝石を身につけることで幸せが訪れると世界各国で信じられていて、身につけるとなんとなく良い1日が送れそうな気がします。ところで誕生石の由来を知っていますか?



誕生石の由来

調べてみると、意外にも新しく1912年にアメリカの宝石業界によって定められたものが由来になっているようです。ここで決まった種類が、いまの日本で広まっている誕生石とされています(日本ジュエリー協会公式ウェブサイトより)。

6月の真珠は「健康、長寿、富」を象徴するもの。大切な人へのプレゼントに、6月生まれの方が自分へのご褒美として普段から身につけるのにぴったりな意味が込められているんですね。

現在の誕生石は比較的新しい文化ですが、真珠そのものは古くから貴重品としてとても大事にされてきました。


真珠の国・ジパング


「黄金の国・ジパング」。この言葉を歴史の授業などで聞いたという人も多いと思います。

中世のヴェネツィアの商人にして、冒険家として知られたマルコ・ポーロの『東方見聞録』で書かれた伝説の黄金郷のことです。もちろん、ジパングは日本を意味しています。

この本自体は探検記というより、どこで何が採取されるのか伝聞情報も含めて記載された一種の情報本でした。東洋の島国にはまだ見ぬ黄金が眠っている。そんな情報は多くの冒険家の心をくすぐったのです。

ところで、マルコ・ポーロが記したジパングは「黄金」に負けるとも劣らない、魅力的な宝石の名前が記されていたという事実は意外と知られていません。

その宝石こそが「真珠」です。『真珠の世界史』によると、マルコ・ポーロはジパングにはついて黄金だけを記したわけではなく、多量の真珠が眠っていることも記していました。種類についても記述しており、バラ色の円型で大粒の真珠、白色の真珠があることを書き残していたのです。



最高の宝石だった真珠


古くは古代ローマのプリニウスが後世に大きな影響を残した『博物誌』のなかで、真珠を「最高の宝石」と位置づけました。

キリスト教社会にとっても数多ある宝石のなかで最高の価値があるとされ、イスラム社会においても聖典「コーラン」に最も多く登場する宝石として、同じように最高の価値を持つとされたのが真珠でした。

マルコ・ポーロの一冊によって、ヨーロッパ中に新たな真珠大国・日本の存在が知られることになりました。わずかな情報を頼りに、富の象徴として輝く真珠と黄金を追い求めて、数多くの冒険家が海に乗り出していくことになるのです。

やがて到来する大航海時代にヨーロッパ人は世界中の真珠を支配するようになり、真珠もヨーロッパ社会に広まっていきました。真珠の広がりを象徴するような肖像画があります。



世界史上、最も真珠を愛した女王


世界史の教科書などにも登場する女王・エリザベス一世を描いた作品です。歴史上、最も真珠を愛した女王。そんな風に思ってしまうくらい、肖像画には大量の真珠が描かれています。

大粒の真珠で髪を飾り、それだけでなく襟にも取り付け、真珠のネックレス(これも惚れ惚れするような大粒の真珠です)を身につけて、正面を見据える女王。少々過剰なくらい真珠を使っているとも思えなくもない肖像画です。

女王であっても身につけていることをつい見せたくなってしまう、最高の宝石「真珠」。まさに「健康、長寿、富」を象徴するのにふさわしい宝石ですね。